解説

静岡県では、県民の健康を保護し、生活環境を保全するため、大気汚染防止法に基づき大気環境濃度の常時監視測定を行っています。
下記項目について、詳細内容を記載します。

大気常時監視テレメータシステムについて

県内各地に設置した測定局から、測定値をリアルタイムで収集し迅速に処理できる大気常時監視テレメータシステムを導入しています。
収集されたデータは、大気環境基準の達成状況の評価や光化学オキシダント注意報等緊急時対応に用いられ、大気環境保全施策推進のための基礎資料となります。
また、測定結果は取りまとめの上、静岡県ホームページや 環境白書等を通じてお知らせしています。

主な測定項目と環境基準について

環境基本法に基づき規定された環境基準は、「人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」であり、大気、水質、土壌及び騒音について、公害防止に関する各種の施策を実施するに当たり、その行政上の目標として定められています。
大気常時監視テレメータシステムでは、大気汚染に係る環境基準が設定されている項目を中心に、以下の項目について測定値を収集しています。

測定項目 説明 環境基準
二酸化硫黄
(SO2)
二酸化硫黄は、硫黄分を含む石油や石炭の燃焼により生じる硫黄酸化物の大部分を占めます。かつての四日市ぜんそくなどの公害病の原因となっていましたが、近年全国ほとんど全ての測定局で環境基準を達成しています。 1時間値の1日平均値が0.04ppm(※1)以下であり、かつ、1時間値が 0.1ppm以下であること。
窒素酸化物
(NOx)
一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)等の窒素酸化物は、主に物の燃焼に伴って発生し、発生源には工場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。
窒素酸化物は、光化学オキシダント、酸性雨などを引き起こす原因物質となり、特に環境基準が設定されているNO2は、高濃度で呼吸器官に悪影響を及ぼします。
(二酸化窒素について)
1時間値の1日平均値が 0.04ppmから0.06ppmまで又はそれ以下であること。
浮遊粒子状物質
(SPM)
浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状の物質のうち粒子の直径(粒径)が10μm以下のものをいいます。
微小なため大気中に長時間滞留し、肺や気管等に沈着して高濃度で、呼吸器に悪影響を及ぼします。
SPMには、発生源から直接大気中に放出される一次粒子と、硫黄酸化物、 窒素酸化物、炭化水素類等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する二次生成粒子があります。一次粒子の発生源には、工場等から排出されるばいじんやディーゼル排気粒子等の人為的発生源と、黄砂や土壌の巻き上げ等の自然発生源があります。
1時間値の1日平均値が0.10mg/m3(※2)以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下であること。
光化学オキシダント
(Ox)
工場等や自動車から排出される窒素酸化物や炭化水素を主体とする一次汚染物質が太陽光線の照射を受けて(光化学反応)二次的に生成されるオゾン等の酸化性物質の総称で、いわゆる光化学オキシダントの原因となっている物質です。
強い酸化力を持ち、高濃度では眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼします。
1時間値が0.06ppm以下であること。
一酸化炭素
(CO)
燃料等の不完全燃焼により生じ、自動車が主な発生源とされています。
COは血液中のヘモグロビンと結合して酸素運搬機能を阻害する等の健康への影響のほか、温室効果のあるメタンの寿命を長くします。
1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm以下であること。
炭化水素
(THC)
炭素と水素から成り立っている化合物の総称で、メタン(CH4)と非メタン炭化水素(NMHC)から成っています。
NMHCは、光化学オキシダントの原因物質の一つとなっており、有機溶剤を用いる塗料、印刷インキ、接着剤の製造及びクリーニングの他、自動車排出ガスが主な発生源とされています。
環境基準は設定されていませんが、光化学オキシダントの生成防止のための指針が示されており、光化学オキシダントの日最高1時間値0.06ppmに対応する午前6時から9時までの非メタン炭化水素の3時間平均値は、 0.20ppmCから0.31ppmCの範囲にあるとされています。
微小粒子状物質
(PM2.5)
微小粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状の物質のうち粒子の直径(粒径)が2.5μm以下のものをいいます。
PM2.5については、呼吸器の奥深くまで入り込みやすいことなどから、人への健康影響が懸念されています。
PM2.5の発生源は、人為起源のものと自然起源のものがあり、人為起源のものとしてはボイラー等のばい煙を発生する施設、自動車、船舶等の移動発生源、塗装や印刷等の揮発性有機炭素を発生させるもの、自然起源としては火山や黄砂などがあります。また、PM2.5は排出されたとき既に粒子のものと揮発性有機炭素や二酸化硫黄、窒素酸化物等のガスが大気中で化学反応して二次的に粒子化するものがあります。
1年平均値が15μg/m3 以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3 ※3以下であること。

※1 ppmとは「part per million」の略称で、100万分の1を表します。例えば、1ppmとは、空気1m3中に物質が1cm3含まれるという意味です。

※2 重量濃度を表す単位で、1mg/m3とは、空気1m3中に物質が1mg含まれるという意味です。

※3 重量濃度を表す単位で、1μg/m3とは、空気1m3中に物質が1μg含まれるという意味です。

環境基準の評価方法は以下のとおりです。

測定項目 評価方法
短期的評価 長期的評価
二酸化硫黄
(SO2)
連続して、又は随時に行った測定結果について、測定を行った日、又は時間について、環境基準により評価を行う。 年間を通じて測定した1日平均値の高い方から2%の範囲にあるものを除外した値について環境基準に維持されること。
但し、1日平均値について環境基準を超える日が2日以上連続しないこと。
浮遊粒子状物質
(SPM)
一酸化炭素
(CO)
二酸化窒素
(NO2)
年間における1日平均値のうち、低い方から98%に相当するものが0.06ppm以下であること。
光化学オキシダント
(Ox)
1時間値が0.06ppm以下であること。
微小粒子状物質
(PM2.5)
年間における1日平均値のうち、低い方から98%に相当するものが35μg/m3以下であること。 測定結果の1年平均値が15μg/m3以下であること。

測定値について

大気汚染状況の常時監視は24時間自動測定しており、この測定結果の1時間ごとの値を1時間値といいます。
静岡県では、現在、前の時刻の正時から当該時刻の正時までの平均値をその時刻の測定値としています。
(例:1時の1時間値は、0時00分から1時00分までの平均値)

測定局において測定し、リアルタイムで収集したデータを速報値といいます。速報値は、測定機器の故障や通信異常等による異常値が含まれている可能性があります。 そのため、種々の情報と照らし合わせ、有効なデータかどうか検証し、必要に応じて修正を行って確定します。この確定された値のことを確定値といいます。

静岡県では、テレメータシステムで収集した測定値を年度ごとに集計し、環境基準の達成状況を評価し、その結果を静岡県ホームページ(静岡県の生活環境課のページ)、 環境白書等で公表しています。

測定局について

県内各地に設置された測定局では、窒素酸化物、光化学オキシダントなどの大気環境濃度や風向、風速などの気象状況を連続測定しています。
測定局には、主に、地域全体の汚染状況を把握するための一般環境大気測定局、自動車から排出される大気汚染物質による大気の汚染状況を把握するための自動車排出ガス測定局などがあります。
また、地域のきめ細かい大気環境濃度を調査するために、コンテナ型の移動測定局を必要な地点に設置して測定を行っています。

光化学オキシダント注意報について

光化学オキシダント注意報とは

夏の日差しが強くて風の弱い日には、光化学オキシダントの原因物質である光化学オキシダントが発生しやすくなります。 光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずるおそれがあるときは、大気汚染防止法及び 「静岡県光化学反応による大気汚染緊急時対策要綱」 に基づき、静岡県知事から光化学オキシダント注意報等が発令されます。

光化学オキシダント注意報等発令地域は以下のとおりです。

地域 地区名 市町村名
伊豆 下田 下田市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、西伊豆町、松崎町
伊豆中央 伊豆の国市、伊豆市
伊東 伊東市
熱海 熱海市
東部 御殿場 御殿場市、小山町
裾野 裾野市
沼津・三島 沼津市、三島市、長泉町、清水町、函南町
富士・富士宮 富士市(旧富士市)、富士宮市
中部 庵原 富士市(旧富士川町)、静岡市(旧蒲原町、旧由比町)
清水 静岡市(旧清水市)
静岡 静岡市(旧静岡市)
志太・川根 島田市、藤枝市、焼津市、川根本町
榛原 御前崎市、牧之原市、吉田町
西部 掛川・菊川 掛川市、菊川市
磐田・袋井 磐田市、袋井市、森町
浜松 浜松市(旧浜松市、旧舞阪町、旧雄踏町)
浜北・天竜 浜松市(旧浜北市、旧天竜市、旧春野町、旧龍山村、旧佐久間町、旧水窪町)
引佐 浜松市(旧引佐町、旧三ヶ日町、旧細江町)
湖西 湖西市

光化学オキシダント注意報等発令基準は以下のとおりです。

区分 発令基準 解除基準
注意報 1以上の測定地点においてオキシダント濃度の1時間平均値が0.12ppm以上になり、気象条件からみて、その濃度が継続すると認められるとき。 それぞれの注意報等の発令地点におけるオキシダント濃度が継続するおそれがないと認められるようになったとき。
警報 1以上の測定地点においてオキシダント濃度の1時間平均値が0.24ppm以上になり、気象条件からみて、その濃度が継続すると認められるとき。
緊急警報 1以上の測定地点においてオキシダント濃度の1時間平均値が0.4ppm以上になり、気象条件からみて、その濃度が継続すると認められるとき。

注意報等の発令時には、健康被害防止のため、教育委員会や報道機関等を通じて、児童・生徒・府民に外出等の自粛をお知らせするとともに、工場等に対して光化学オキシダントの原因物質の抑制を図るため、使用燃料や揮発性有機化合物の削減を要請するほか、石油卸売業者や燃料小売業者に対し給油の制限を要請し、自動車についても運行の自粛の呼びかけを行っています。

光化学オキシダント注意報等が発令されたときは

  • ☆野外にはなるべく出ないようにしてください。
  • ☆目がチカチカする、喉が痛い等であれば、目を洗う、うがいをするという処置を行い安静にするとともに、最寄の保健所、市役所、町役場のいずれかへ連絡してください。
  • ☆手足のしびれ、呼吸困難、失神などの症状が万一生じたときは、医師の手当を受けて下さい。